旅の武勇伝(ケニア編) | アフリカ大陸リアルタイム旅日記

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アフリカ大陸を彷徨うバックパッカーが、旅の様子をリアルタイムに報告します。

長く旅をしていると、時々その道中で日本人旅行者とすれ違う。そういうとき僕達は自己紹介や旅の情報交換、またはお互いの旅遍歴を語り合うなどして時を過ごす。こういう時間は僕達にとってなかなか有意義なので、つい長々と話し続けてしまうのだが、あまりに長く話し続けていると、しだいにハナシの主旨が変わっていって、


「ヒッチハイクで何百キロ進んだ」

とか

「何泊連続で野宿した」

とか

「どんなに危険な場所をいかに無事にすり抜けたか」


とかいって、もうなんだか武勇伝の品評会みたいになってしまうことが多々ある。ちなみに僕はこのテの自慢話が大嫌いである。そもそも人に自慢するために旅をしているわけではないし、海外でどんなに苦しい経験を積んだとしても、それが人に自慢できる事だとは思わない。だから僕は過去にも


「ヒッチハイクでエベレストに行ったんだぜ」


  なんてイスタンブールの日本人宿で自慢しまくったとか


「ボスニアなんていまだに地雷が埋まっているけど、俺は全然大丈夫だったぜ。」


  といったような武勇伝を、西ヨーロッパで会った卒業旅行の女子大生に、訊かれてもいないのに自らペラペラと喋りまくったとか、そういうような事をしたことは無い。何故ならそういうのはとても恥ずかしいことだし、何よりも僕が自慢話が嫌いだからである。だからこのブログでもそういった武勇伝について書くつもりはない。エジプトから始まってスーダン・エチオピアと、これまで飛行機を使わずに旅をしてきて、その行程はとてもハードで実際幾つもの武勇伝を残してきており、それについて書くこともできないわけではないが、万一間違って自慢話と思われてはとてもかなわないので、僕は決して書かない。だから今回も従来どおりのリアルタイム現地報告として、現在滞在しているケニアの首都ナイロビについて書こうと思う。



ケニアの首都ナイロビ・・・



南アフリカのヨハネスブルグ、ナイジュリアのラゴスと共に「アフリカ三大凶悪都市」と言われる街である。いや、この際「世界三大凶悪都市」と言っても決して過言ではないだろう。ガイドブックの記載や日本大使館が発する警告、そして旅行者の情報によれば





「10人がかりでひとりを襲う」



「腕時計を奪うために腕ごと切り落とす」



「抵抗したら容赦なく銃で撃つ」



「周りの人間は見て見ぬフリ」





全く恐ろしすぎる街である。特に最近の犯罪発生率と凶悪度は増加の一途をたどる一方で、反面犯人の検挙率は低下してくばかりだそうで、これはもう本当に自分の身は自分で守るしかないといった感じである。なにしろ旅行者以上に事情に詳しいはずの現地居住の日本人でさえ、白昼堂々銃で射殺されているくらいである。これでは普通の外国人なんておちおち旅行もできない。そんなところで僕がいったいどうしているのか皆も気になっていると思うので、僕のナイロビでの毎日を書こうと思う。


僕は現在ナイロビはダウンタウンの「リバーロード」という通りにある安宿のひとつに滞在している。ガイドブックによれば、この地域はナイロビでも最も危険な地域であり、過去に多くの外国人が武装強盗の餌食になっているところである。しかしながら僕個人に限っていえば、今のところ全く無事である。なぜかと言うと



「全く外出していないから」



である。いや、別に出歩くのが怖いわけじゃない。過去に数々の武勇伝を残してきたこの僕だ。いくらナイロビが危険といっても、武装強盗ごときに遅れをとる僕じゃない。むしろ本来なら街へ繰り出してナイロビ警察に代わって悪党どもを退治してやってもいいぐらいなのだが、実は大切な理由があって、いつも部屋にいるのである。誤解のないように、これからその理由を説明したい。



現在、僕は節約のために相部屋に宿泊しているのだが、僕のとなりのベッドにいる人物が「エーデル」という名のアイルランド人の女子大生である。白い肌にブロンドヘアー、スタイル抜群のものすごい美人だ。もし彼女のような女性に告白されたら、普通の男なら一発で落ちてしまうだろう。そのくらいの美女なのだ。


ただ彼女、外見はパーフェクトなのだが、素行に少々問題がある。困ったことにこの女性、実は部屋にいるときはほとんど「下着姿」なのである。ブラジャーとパンティーしか身につけていないのだ。あと、何故だかそのブラジャーとパンティーをいつもベッドに放り出しにしたままで外出したりしてしまう。もし節操の無い男がそんな光景を見たらよからぬ気持ちになるであろう。しかし読者もご存知のように僕はいまどきの日本人には珍しいくらいの純情青年なので、女性の下着にも彼女にも全く関心は無い。無いけれども、なぜかいつも僕は部屋にいる。



彼女が部屋にいるとき、僕はいつも彼女の事を見ている。いや、誤解しないでもらいたい。彼女と会話をしているだけである。


彼女が部屋にいないときも、僕はいつも彼女のベッド周辺を見ている。いや、これも誤解しないでもらいたい。不審者が彼女の下着を持ち去ったりしないように、見張っているだけである。



まったくそんな事情のために、僕は本当はナイロビの街を歩き回りたいのだけれど、残念ながらそれもかなわず部屋にこもっているのである・・・。本当に残念である・・・。まあそれでも、どんな理由であれ、僕が「凶悪都市ナイロビでも臆することなく過ごしている」のは事実であり、これはもう武勇伝中の武勇伝といっても決して言い過ぎではないだろう。しかし・・・



・・・しかし、初めにも言ったとおり、僕は旅の自慢話というやつが大嫌いである。だから今まで旅の武勇伝について自ら語った事はほとんどないし、恐らくこれからも無いだろう。特に「危険なナイロビの街でも無事に過ごせた」という武勇伝とその理由については、一生誰にも語るまいと、固く心に誓っている。そのワケは決して


「恥ずかしくて人には話せない」


からではなくて、あくまで


「自慢話が嫌いだから」


である。勘違いしないでいただきたい。